2019年1月11日金曜日

イノシシの家族には冬の間は好きなだけ、美術館の庭に穴を開けてほしいと思っています。
今年はニューヨークに1969年に渡って住み出して以来50年目になります。
全く何の頼るものもなく、単独で芸術家たらんとして半世紀を日々、今日に至るまで芸術に専心して来ました。
今年も元旦から長さ 2、4メートルのキャンバスを張って仕事、製作をしています。
良寛は紙が真っ黒になるまで書を修練し、紙が無くなると空中に毎日千字を書いて書に打ち込みました。その結果、古今の誰も書くことの出来ない書を今に残しています。良寛はいかなる僧徒教団にも属さず、コツジキをしながら書や詩歌の芸術に数希な人として生涯を送っています。
いかなる集団にも属さずというのは揺れることのない心意気の持続を要します。現代において何ものにも頼ることなくコツジキの精神をニューヨークで続けながら、良寛を友人として半世紀を生きて来ました。
美術館では2006年のオープン以来、ドアからつい入って来た蝶、トンボ、アブなどの昆虫は、美術館関係者の全員が、殺すことなく、できるだけ袋で捕まえて外へ出してやるようにしています。
これは慈悲の気持ちからではなく、全ては人間も含めて、対等、同等の気持ちからしていることです。(この気風は美術館が存続する限り、続けてほしいと思っています。美術館の存在理由の大きな一つもここにありますから。)
イノシシにはイノシシの、アブにはアブの生き方があります。ニューヨークで芸術家として生きることはイノシシやアブがそれぞれ単独で自由に生きている生き方となんら変わることはありません。

野生のイノシシたちには思い切り自由に冬の間、誰もいない美術館の庭で野放図に遊んでほしいと思っています。