岡本陸郎美術館ニュースレター 2022年秋深き号
美術館は例年のように12月1日から3月31日まで冬季休館に入ります。2023年は4月1日に春の開館をします。
美術館では今年もコロナに感染した人もなく無事平穏のうちに年末を迎える事ができました。
長かったコロナの影響で山積していた美術館の種々の懸案をしばらくぶりに今年は解決できました。
2006年に美術館を開館した際にはニューヨークから「動く岩」や「絵画作品」などの輸送用に2、5メートルの箱を30個以上自作し、海上を輸送して設置しました。輸送用の箱の材木は大量で、美術館の事務所奥の作品制作の仕事場に2階の材料として使いました。廃材に近い材木なのでこの2階は永久性がなく、私以外の人が登るのは危険だったので、この夏に2階の80%を壊しました。2階を倒壊するのは危険なので全て一人で数週間かけてやりました。この大量の廃材は、大分の山本氏や近くの渡邊氏の協力をいただき、一緒にエッサ、エッサと運び出し数日かかってついに全てを廃棄できました。仕事場が本格的に大きな作品の制作が出来るようになりました。
「野の花遊歩道」は新たな「名札」を200年変色しないプリンターで全く新しく作り直し、地面にドリルを使用して抜けない深さに差し込みました。1000メートルの高原の風雨に耐えて花たちの名前と花期を示しています。誰でもすぐ何の花が咲いているかがすぐわかるように、地面を使った図鑑の役割をさせています。目下100種類の草花の名札が立っています。自然は気の遠くなるほど無限ですからこれからいくらでも名札は増えていきます。
1969年にニューヨークに芸術家たらんとやってきて以来、作品制作のために大きな重い材料との格闘を50年以上続けてきたために、学生時代の背丈が9センチも縮んでしまいましたが、体調は週に3回の水泳でほぼ完璧です。懲りずに制作のためには日々機械を使って切ったり張ったりの肉体労働を続けています。コンピューターと土方労働者の肉体付きの良寛を目指して今も日々24時間芸術の研究者生活を続けています。
芸術とは、時代の浮薄な泡のようなパラダイムに振り回される事なく、新鮮で無限の面白さと可能性に満ちていることを次の世代に伝えて行ければと思っています。
美術館は来館者の感想を自発的に書いてもらって、スキャンしてそのままに美術館ブログに載せています。この試みをしている美術館は公共美術館を含めてほとんどありません。時代の狭い教育知識や動きにとらわれた手垢のついた洗脳とは無縁に、全く自由な立場の新鮮な感想を書いてもらうことこそ意義があります。
「スタッフの方のていねいな説明で楽しい時間を過ごす事ができました」という感想がしばしば見られます。美術館の雰囲気がいつも明るく新鮮な生気に満ちているのは、壮大な大自然の阿蘇の山々や大草原とそこに生きる動植物たちと人々のおかげです。
2023年はコロナも落ち着いて、人間の愚かな戦争は続くでしょうが、大自然の一部である普通の人々にとって平和な落ち着いた年でありますように。