今年はコロナ危機を広げないために、美術館は休館を強い意志で続けています。アメリカもヨーロッパも感染の再拡大が起こって止まらない状態です。根気よくワクチンの完成を待つより無いようです。
1969年以来50年以上住んで仕事をしているニューヨークでは、マンハッタン26丁目の住居に1978年から、42年間住んでいます。ここで「動く岩」や絵画作品の制作を続けてきました。引越しをすることもなかったので、集中を切らすこともなく日々静かに仕事に専念することが出来ました。
多様な人間の各個人の生きる様を見つめていると、地球という惑星に生まれている生物の全てに共通する、はかなさと面白さを見ることが出来ます。この数年の「Dancing New Yorkers」の連作は2、4メートル x 90センチの画面に、半世紀に渡って身の回りに実際に出会ってきた多様な人々を描くことを続けています。無数の個性ある人々がこのニューヨークという街にはうごめいて、人種や貧富に関わらずホームレスから老若男女の全てが苦悩や喜びに満ちて生きている様を捉えようとしています。実は日本の人々にも全く同じものを見ることのできる普遍的な人間の姿です。
人々はあたかも無限の宇宙空間にポーンと投げ出された星々のように、瞬時の偶然の時間を舞いながらどこに着地するのかさえ知らないままに浮遊して生きています。
それを面白いと見るか、現実の厳しさと見るかは意見の分かれるところです。芸術家はただ冷静な何者にもとらわれない瞳で見つめるばかりです。
私は小中の子供の頃からセザンヌの作品の模写を一人で繰り返していました。身近なよく知ったリンゴやナシや故郷の山を生涯毎日描き続けたセザンヌの制作の姿勢こそ芸術家として至高のものです。芸術はほんの数年の浮き沈みではなく、生涯を通した芸術家個人の思考と実験と挑戦の戦いの記録です。
これまでの作品や新作のほぼ全ての作品の写真を、ホームページサイトで見ることが出来ます。www.rikurookamoto.com です。 (撮影・編集: 岡本)
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