2018年5月28日月曜日

花盗人はマボロシでありました。
実は感心していました。もう花は終わって葉だけになっていた、 安物の細い1メートルくらいの桃の苗木を、盗むというのは、余程の物好き、風狂の人士でないと起こり得ない。
盗むというのは、一応惚れた、美しさに魅せられたということである。この人間界のルールである法律を破ってまで我が物にしたいという気持ちが高揚してついに自分の庭に持って行って楽しみたいという気持ちになった、ということである。あの情けない細い安物の苗にそれほどの思い入れをしてくれた人がいたか、と実は内心喜んでいた。そんな風流人がこの世にいてくれたことに感心さえしていた。私が50年以上にわたって、日々24時間心身を投入している芸術というのは、本来この花盗人の気持ちの高揚に近い営みでさえある。こんな花盗人の人士なら本物の芸術を理解できるかもしれない、と嬉しくさえなっていた。
そこで、    花盗人風雅の人ならそれも良き
そして、    安物の苗咲きほこれ他所の庭
という二句まで詠んでいたくらいである。
それが、今日、27日美術館からの日報に、
「盗まれた現場を隣の人に案内していたら、なんと中ぐらいの石の横にありました。犯人はイノシシと思われます」とメールが来ました。
やはり人間にそれほどの風雅の人はいなかったか、花盗人はマボロシであったかと、ちょっと残念な気持ちさえしています。
5月18日の盗難発見時に、イノシシでないか、よく確認してから、本当に人間なら、他の「野の花遊歩道」の花も持っていかれる恐れがあるので、一応、警察に連絡してほしい、と連絡し、長者原の駐在所の警察官の方に御足労いただいて、数回も来ていただき、この花盗人について調書も作っていただいたという話です。大変、申し訳ありません。平和な阿蘇の高原を瞬時騒がせた花盗人もマボロシでありました。


追記:これによって、大きく掘り起こした穴はイノシシ、地面に引っ掻いた様な跡はタヌキによると判明しました。1000メートルの高原なので、いろいろ思わぬ発見があります。人の姿の見えない、暗くなった夜にやって来る様です。

0 件のコメント:

コメントを投稿