今年は阿蘇全域に鹿の頭数が大量に増えています。夜、車で走っていて突然鹿にぶつかられて修理に莫大な金額がかかったという人も何人か聞いています。ゆっくり慎重に走っている車の直前を突然敏捷にジャンプして鹿が横切ることもあります。また6、7頭の家族がこちらを余裕を持って振り返りながら道を横切る姿を見ることもあります。「世の中よ道こそなけれ思ひいる 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」という古歌がふと思い起こされ、ああ、ここは世を遠く離れた山奥の秘境、辺境の地であるなーという一種痛快な気持ちさえしてきます。
その「秘境高原の美術館」の「野の花遊歩道」の花たちのツボミは柔らかく、鹿にとってはデザートの美味な甘味なのでしょう。マツムシソウ、タムラソウなどの毎年咲いていた美しい花のツボミが次々にパシっと食われてしまっています。今年は見ることができないのが残念です。コオニユリのほぼ6割以上のツボミが鹿の胃袋に消えています。幸運にも残っているツボミがこうなると非常に貴重な贅沢品に思えてきます。このまま食べられずに咲いてくれと願ってよく見ると、緑色の小さなバッタが同じ思いなのかコオニユリのツボミに頼りなくしがみついています。しかしバッタの目玉は茫然としすぎて、食われても気にしないようにも見えます。バッタはただ世を遠く離れた痛快な秘境高原の清澄な空気を楽しんでいるようです。(撮影:手嶋 編集:岡本)
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