美術館の「野の花遊歩道」には目下100種類を超える草花が季節によって次々に咲いています。それぞれにカラー写真と名前と花期を書いた名札を立ててあります。この名札は風雨にも耐える材料で作ってあります。材料は長さに切断してから、組み立ては塩ビの溶接機械で作っています。目下100本ほどが立ててありますが、まだまだ増えて行く予定で目下は150本になる予定です。
この材料の透明のプラスチック2種類は日本では売っていない材料で、ニューヨークでは購入出来るので、マンハッタン26丁目の自宅仕事場で、写真の Arm Saw で必要なサイズに切断しています。名札1個についてプラスチック片は6本必要なので、全体で150本は150x6=900回の切断が必要です。
Arm Saw は裸の直径25センチの刃がブーンと回っていて非常に危険なものです。工場での事故の最大の要因は袖や衣服を回転する刃に巻き込まれることで、一度巻き込まれたら人間の力では抵抗できません。危険と隣り合わせの仕事の連続です。これまで50年以上無事故に、「動く岩」の内部金属構造や絵画作品のフレームなどの材料の数万回の切断をして来ました。無事故というのは、その数万回の各回に目を一瞬も回転する刃から逸らすことなく、腕や体の位置をスローモーションのように移動させる慎重さを保って来た結果です。
肉体労働においても慎重さと長年の日々の一定の心身の安定の維持こそ芸術家の必須の本質です。とはいえ、緊張だけではなく笑いながら心楽しく仕事しているからこそ50年以上の継続があります。一本の野の花の清々しい姿を見るだけで数万の努力は一瞬のうちに報われた気持ちがします。(撮影・編集:岡本)
クリックすると大きく見えます。
0 件のコメント:
コメントを投稿