2019年5月30日木曜日

美術館の立体棟の動く作品は、2006年のオープン以来、今年で14年目に入ります。「動く岩」が2点、「動く立方体」が1点、どれも重さは1トンほどもあり、これから長年に渡って、できれば数百年、動かし続けて行くことは大きな挑戦でもあります。内部の機械部分は外部からは全くわかりませんが、相当の複雑な構造をしています。これらの全てを40年前に自分で設計、製作して来たので、完全に把握ができています。電気部品のモーター、リレー、マイクロスイッチなどの完璧に調和した動きによってこの13年動き続けてきました。
将来、できるだけメインテナンスの負担がなく動き続けるためには、バックアップのためのモーター、ギアなどの2重、3重の準備が必要です。
これらの作品は1980年代に製作し、今から40年ほど以前になります。人間世界のモーターなどの製品も日夜止どまることのない変化を続けています。その頃のモーターは今はどこも作っていない製品で、今ではモーターのサイズは小型化し、パワーはアップしています。
モーターのシャフトのサイズは40年前は直径10ミリでした。10ミリのサイズは数百年に渡って動かすには問題があり、今では直径12ミリのシャフトを使っています。直径の2ミリの差は非常に大きいものです。モーターのサイズが変わるとギアとラックの噛み合わせの位置関係を完全に同じ高さにせねばならないという工夫が必要になってきます。これはニューヨークの自宅のドリルプレスで慎重に自分で解決ができます。
ギアはシャフトとの接続にブッシングを間に入れてキーになる溝を切る必要があり、この部分だけは旋盤工による特殊な加工をしてもらう必要があります。40年前にはマンハッタンの中にキャナルストリートの近くに旋盤工場があり、旋盤職人のガスがいつも簡単にやってくれていましたが、こういう小さな町工場もすでにマンハッタンからは消え去り、今ではブルックリンまで地下鉄をFからLと乗り継いで閑散とした寂しい工場街の片隅に生き残っている旋盤工場に出かけてやってもらっています。これらの工場が消え去る前に十分な量の部品を全て作っておく必要があります。
モーターは日本製ですがこれも時代によって変化転変極まりなく、十分な数のモーター、ギア、のバックアップを今、完了して美術館事務所奥の仕事場の棚に将来に備えてこれらのバックアップ機械、電気部品を準備してあります。これらの部品によって将来数百年にわたって動かし続けることが理論上は可能にしてあります。
あとは阿蘇の寝釈迦の心次第、日本列島の穏やかなるか、ならざるかにおまかせしています。(撮影・編集: 岡本)

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